症状別にくわしく知っておきたい!

【認知症の症状17】性的問題行動

 

認知症によっておこる周辺症状の対応で一番むずかしいのが性的問題行動ではないでしょうか。

 

介護をしてくれているお嫁さんや、ホームヘルパー、介護士に抱きつくなど・・。

 

しかし、ついつい・・

 

「認知症だから仕方ない」

 

「認知症だから言ってもどうせわからない」

 

 

 

本当にそうでしょうか?

 

たしかに認知症による性的問題行動の対応はむずかしいことです。

 

そして、デリケートなことなので影に隠れてしまいがちです。

 

それゆえ、被害を受けた介護人が周囲にもらさず黙ったまま泣き寝入りしてしまうことも。

 

しかし、それではいけません。

 

なぜなら、介護人が誰かを介護をしている時間は、介護人にとっても大切な時間であり、貴重な人生の一部なのです。

 

認知症に限らず、決して、誰かのために自分の貴重な時間を犠牲にする必要はありません。

 

抑制は人間ならではの特質

 

私たち人間は誰でも多くの欲求を持ちながら生活しています。

 

三大欲求と呼ばれる「食欲」、「睡眠」、「性欲」のほかにも、他人に認められたい「承認欲」、優越感をもちたい「名誉欲」、勉強をして高みを目指したい「知識欲」など。

 

このようにたくさんの欲求をもつ人間ですが、ほかの動物とちがい「抑制というブレーキ」があるため、コントロールすることができます。

 

この抑制という機能は、人間がほかの動物よりも脳の前頭葉が発達したことで生まれた人間特有のものなのです。

 

認知症になるとどうなるか?

 

「抑制というブレーキ」をもつ人間の脳ですが、認知症になるとどうなるでしょうか?

 

もしも前頭葉を含む大脳皮質が壊れてしまった場合、「抑制というブレーキ」が効かなくなります。

 

つまり、さまざまな欲求がそのまま表にでてきてしまうことに。

 

その中でも、私たち人間が一番デリケートにしている「性欲」も表に出てきてしまうことになるのです。

 

記憶が逆行することで若い自分に

 

認知症になると新しい記憶からドンドンさかのぼっていき、本人にとっては古い記憶が最新の状態になっていきます。

 

ということは、たとえ80代の高齢者でも、20代の頃の記憶までさかのぼってしまうことも。

 

するとどうなるでしょうか?

 

女性ならば、目の前に素敵な若い男性があらわれたらドキドキすることもあるでしょう。

 

男性ならば、目の前に素敵な若い女性があらわれたら声をかけたくなることもあるでしょう。

 

これら、記憶の逆行と合わせて、認知症により「抑制というブレーキ」が効かなくなれば、そのまま行動にでてしまうのも仕方ありません。

 

性的欲求が原因でないこともある

 

紛らわしいのですが、中には「性的欲求からきていない行動」というものあります。

 

たとえば・・

 

公衆の面前でいきなり服を脱いだり、排せつをしようとしたり。

 

まず、これらの行動について考えてみましょう。

 

■本人だけがもつ原因がないか?

 

いっけん、性的問題行動と思ってしまいがちなことに、じつは本人だけがもっている別の原因が隠れていることがあります。

 

■公衆の面前でいきなり服を脱ぐ

 

■公衆の面前でいきなり排せつしようとする

 

これらの行動をすぐに性的問題行動だと結びつけてしまうと適した対応ができなくなります。

 

なぜなら・・

 

●服を脱いだのはただ単に「暑かったから」かもしれません。

 

(記事参照:【症状14】真夏に冬用コートを着る

 

●排せつをしようとしたのはただ単に「排せつしたくなったから」かもしれません。

 

(記事参照:【症状7】排せつ問題

 

ですが、このような行動は性的欲求がからんでいなくても、一緒にいる介護人にとってはたまったものではありません。

 

即座に機転の効いた対応が必要となります。

 

■外出時はいつも行動を共にして、そのつど注意する

 

■暑くなった時のために最初から薄手の服を着せて、上着をつねに用意しておく

 

■排せつしようとしたときは、風呂敷などで隠す

 

■本人が好きな雑誌などを持ち歩き読んできかせる

 

■携帯から知人に電話をかけさせる

 

このように、本人の状態をいつも観察して外出時にはとっさの事態に対応できるように準備しておくことです。

 

卑猥な発言、性的問題行動の対応

 

では、認知症による性的欲求の暴走からきている問題行動の対応について考えていきましょう。

 

■卑猥なことを言われる

 

■胸を触ってくる

 

このような場合、介護人が厳しい態度で立ち向かう必要があります。

 

■ハッキリと拒否する

 

まず、なによりも大切なことは嫌悪感があること、恐怖感があることをわかりやすく伝えることです。

 

あいまいな態度でごまかそうしても、本人はますます面白がってしまい解決には至りません。

 

認知症患者の性的問題行動の対応としてよくあるのが、

 

「相手は3才児の脳だから言っても仕方ない」

 

というものです。

 

しかし、これは間違っていると思いませんか?

 

なぜなら、本当の3才児であっても、「ダメ!」と強く否定すれば理解するこができます。

 

たとえ認知症により3才児の脳になっていても、物事の善悪はハッキリと示せばわかります。

 

ですから、性的問題行動に関しては強くキッパリと拒否しましょう。

 

そのとき、言葉数はできるだけ少なく、本人の目を真っ直ぐ見てハッキリとした声でいいます。

 

 

 

 

このように、「本人が発する言葉がイヤなこと、また触れられたくないこと」を毅然とした態度で強く拒否しましょう。

 

■信頼できる人に相談する

 

性的問題は恥ずかしくて周りになかなか相談しにくいものです。

 

しかし、どうか勇気をだして誰かに相談してみてください。

 

家族に相談できる人がいなければ、医師やケアマネージャーなどに。

 

施設内であれば、信頼できるスタッフなどに。

 

他人に相談することで心が落ち着き、冷静な判断ができるようになります。

 

 

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性的問題行動は喪失感がおこしている可能性も

 

性的問題行動はハッキリと本人に拒否を伝える必要があります。

 

しかし・・

 

なぜ、そのような行動をしてしまうのか?

 

それは認知症による脳の障害だけではなく、ほかの背景が原因となっている場合もあります。

 

本人と介護人、両者にとってより良い解決に導くためにはこれらの背景を無視してはできません。

 

なぜなら、高齢になると人間は2段階の喪失感を味わうといわれています。

 

【1段階】
仕事を退職することで現役ではなくなったという喪失感

 

【2段階】
地域などの関わりから退き、社会から完全に引退したという喪失感

 

この2段階の喪失感は認知症に関わらず、多くの高齢者が味わうものです。

 

つまり、「性的問題行動のすべてが直接的な行動を求めているとは限らない」ということです。

 

さらに認知症という病気になると、基本的欲求を自力で満たすことができません。

 

(記事参照:認知症の人が求めているものは何か?

 

また、それによって大きな不安感をともないます。

 

(記事参照:認知症の症状の共通点は「不安感」

 

高齢者に加え認知症を抱えている場合、このような背景があることを察してあげる必要があります。

 

では、このことに配慮しながら対応法を考えてみましょう。

 

■本人が納得できるよう話し合う

 

認知症の人と話し合うときの基本は「何度も繰り返し、ゆっくりと」です。

 

間違っても、大きな声で怒鳴ったり、叱りつけてはいけません。

 

本人が歩んできた人生、それに伴う喪失感に寄り添いながら話し合いましょう。

 

性的問題行動を解決したい場合はついついダメなことだと説得してしまいがちですが、あくまでも本人が「納得」できるような話し合いにするのが理想です。

 

■タッチケアで安心感を

 

誰でも寂しくなると人肌が恋しくなるものですよね。

 

高齢になって味わう喪失感、そして認知症という病気・・

 

これらの事柄に直面している不安感は本人しかわかりません。

 

ですが、寄り添ってあげて、安心感を与えてあげることはできます。

 

肩を優しくたたく、両手で手を握ってあげるなど・・

 

簡単なスキンシップでも心が落ち着くものです。

 

■ほかのことで満たす

 

性的問題行動の解決だけに集中しすぎてしまうと閉鎖的になりがちです。

 

とくに家族間で起こっている場合は家の中に問題が隠れてしまうことで悪循環になることも。

 

そうならないためにも、デイサービスなどに積極的に参加して違う風を入れてみましょう。

 

外でほかの人と接することで刺激があり、問題行動が改善されることがあります。

 

また、本人が好きであり、関心があることを探してみましょう。

 

音楽を聴くこと、歌うこと、絵を描くこと、ガーデニング、ゲーム、などなど、性的欲求がほかのことで満たされるようにうながします。

 

実害がない恋愛意識について

 

性的な欲求が抑制できないのは悪いことばかりではありません。

 

記憶の逆行で心が若返ることにより、ふたたび若い頃のように異性を見てドキドキし、それを行動で示すことは、ある意味「生きている」という証でもあります。

 

性的な欲求が合意のない相手への行動に出る場合は何としても解決しなければいけませんが、実害がない場合は本人の気持ちと行動に合わせて臨機応変に対応しましょう。

 

よみがえった恋愛感情は時として、嫉妬などのマイナスな気持ちを引き出すこともあります。

 

また、介護施設内では恋愛が発展してプロポーズをされたりなど・・さまざまなことがおこる可能性もあります。

 

そのようなときは、「認知症によって記憶が若返っている」ということを念頭に対応してあげましょう。

 

 

たとえば・・

 

■「やきもちをやかれて困っている」といった恋愛相談を受けた場合、「若いですねー」と笑い飛ばすのは良くありません。

 

 

※このようなときの対応例

 

 

 

 

 

そうですか。それは困りましたね。では○○さんに刺激を与えないように目の前で他の女性に話しかけるのをしばらく控えてみてはどうでしょうか?


 

 

 

 

■急に化粧をしたいといわれた場合、「急にどうしちゃったの?」と驚くのも良くありません。

 

 

※このようなときの対応例

 

 

 

 

 

うん!いいよ!じゃ私も一緒に化粧の練習しようかな


 

 

 

 

このように本人の気持ちに立って対応をしてあげるのが良いでしょう。

 

重大な問題であることを認識する

 

■認知症により性的欲求が抑制しにくい

 

■記憶の逆行により若い頃のような恋愛感情が生まれる

 

もちろん、認知症患者すべての人が同じ症状がでるわけではありません。

 

ですが、このような性的行動が表にあらわれる場合は、その人それぞれに合った対応をしていく必要があります。

 

なかでも、実際に行動におよんでしまう性的問題行動は闇に葬られてしまいがちです。

 

しかし、冒頭でも言いましたが、介護の時間は介護人にとっても貴重な人生の一部です。

 

その貴重な時間を犠牲にしてはいけません。

 

自分を大切に思う気持ちがあってこそ、はじめて相手を大切にできるのです。

 

(記事参照:【2条】自分の身体を大切にする

 

認知症による性的問題行動はとても難しい問題ですが、決してあやふやにしてはいけません。

 

「重大な問題であり、、必ず解決しなければならない問題」であることを忘れずにきちんと対応していきましょう。